なぜエルサルバドルでビットコインが法定通貨になったの?
国民は「普段の生活」でどれくらいビットコインを使っている?
法定通貨に制定されたことで、ビットコイン価格にどんな影響が?
実は、実際にビットコインはエルサルバドルで法定通貨として機能しています。
一部の地域では、日用品の支払いに使うレベルにまで、国民に浸透しているのが現状です。
私は今回の法定通貨化について、外務省HPやアメリカの経済雑誌ForbesなどのあらゆるWebメディアとSNSで調べ尽くし、この記事にまとめました。
この記事では
- エルサルバドルでビットコインが法定通貨になった理由3つ
- エルサルバドルの現状
- 発展途上国の希望になりうるビットコイン
を解説していきます。
この記事を読むと、ビットコインに対する考えが深まり、エルサルバドルの法定通貨化について詳しい人になれます。
気になる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
エルサルバドルって?【世界初のビットコイン法定通貨国】
ここでは「基本情報」や「国の特徴」などについて解説していきます。
エルサルバドルの基本情報と3つの特徴
首都 | サンサルバドル |
面積 | 20,040平方キロメートル(九州の約半分) |
公用語 | スペイン語 |
人口 | 約649万人 |
民族 | スペイン系白人と先住民の混血約84%、先住民約5.6%、ヨーロッパ系約10% |
特徴 | 火山国かつ地震国 |
エルサルバドルの3つの大きな特徴は、内戦・驚異の治安回復・火山です。
1992年まで続いた内戦の傷跡は深く、現在も治安改善と復興の途中にあります。
殺人事件の発生率は、2014年〜2018年の間で世界一です。
しかし、2019年の大統領選挙で当選したナジブ・ブケレ大統領が治安対策に注力することで殺人率を半減させました。
国民性は勤勉で温厚なことから「中米の日本」と称されており、イメージするラテン系の雰囲気よりも落ち着いていると言われています。
また、20以上の火山を持つエルサルバドルが、環境を生かした地熱発電に力を入れていることはご存知しょうか?
2021年10月には、火山の熱を生かした世界初のマイニング方法で0.0059BTCの採掘に成功。(執筆時:約1万6千円相当)
「マイニング=大量の電力消費」が叫ばれる中、再生可能エネルギーでビットコインの採掘ができたことから注目を集めました。
エルサルバドルでビットコインが法定通貨になった理由3つ
エルサルバドルでビットコインが法定通貨になった背景には、3つの理由がありました。
- 70%の国民が銀行口座を持っていない
- 送金手数料に年間4億ドルが消えている
- エルサルバドルの大統領がビットコインの未来を信じている
それでは詳しく解説していきます。
1. エルサルバドルの70%の国民が銀行口座を持っていない
日本で暮らしていると「銀行口座を持っていない」と言われてもピンときませんよね。
日本の銀行口座保有率はほぼ100%で、先進国でもトップクラスです。
しかし、エルサルバドルの話に限らず、発展途上国の人々は「4人に3人」が銀行口座を持っていません。
理由は3つあります。
- 銀行が遠く、長時間のバス移動が必要
- 口座の開設手続きに必要なものが用意できない
- 口座を維持する費用がない
口座を持てないことで、事業を立ち上げることはもちろん、現金を持ち歩くリスクにもさらされます。
エルサルバドルのような発展途上国の人々にとっては、銀行口座を開設するよりも、手持ちのスマートフォンひとつで入出金や支払いができるビットコインを保有する方が「簡単かつ安全」です。
2. 送金手数料で年間4億ドルが消えている
出稼ぎをして生活を営む人が多いエルサルバドル。
母国に住む家族にお金を送る度に、送金手数料を支払っています。
GDPの約2割に相当する59億ドルにかかる送金コストが、おおよそ4億ドルというわけです。
正規の銀行と取引ができないと、最大で送金額の50%を手数料として取るような業者に頼るしかない状況になります。
ビットコインで自国に送金すれば、手数料は0%〜0.2%ほどなので、大幅な手数料削減が可能です。
例えば、20万円を家族に送金する場合、現金の手数料は最大10万円。ビットコインの手数料は4千円ほどになります。
「騙されているのでは?」と思うほど、ビットコインで送金した方が桁違いに安くなりますね。
3. エルサルバドル大統領がビットコインの未来を信じている
「お金を直せば、世界を直すことができる」と2021年のビットコインカンファレンスでスピーチをしたブケレ大統領。
貧困に苦しむ国の問題を解決するには、ビットコインが必要と強く主張しています。
2021年6月8日「ビットコインが法定通貨に採用されるかどうかの審議」を待つ間に、ブケレ大統領がTwitter Spaceに飛び入り参加しました。
このブケレ大統領の発言がビットコインを法定通貨に押し進めた理由そのものです。
「貧困が犯罪の温床となっている。
経済を再興してすべての子供が学校に通える、
国民が出稼ぎに行かなくてすむ、
米国に渡った国民が戻ってこられる国に作り替えなければならない。ビットコインはゲームチェンジャー。
エルサルバドルだけではなく世界にとって。」Twitter Spaceのブケレ大統領の発言(一部抜粋)
ブルームバーグの統計では、ビットコイン価格急落により、ブケレ大統領は5,600万ドル相当の資産を失っています。
しかし今年2022年7月には80BTCのビットコイン(約2億円相当)を買い増ししており、ビットコイン法定通貨国として全くブレることがありません。
El Salvador bought today 80 #BTC at $19,000 each!#Bitcoin is the future!
Thank you for selling cheap 😉 pic.twitter.com/ZHwr0Ln1Ze
— Nayib Bukele (@nayibbukele) July 1, 2022
ビットコインはどこで使われている?エルサルバドルの現地状況を解説
ビットコインはエルサルバドルの海沿いにある町「エルゾンテ村」を中心に使われています。
別名をビットコインビーチとも呼ばれており、サーフィンの聖地としても有名です。
エルゾンテ村では、日用品や公共料金の支払い、そして教育助成金としてもビットコインが活用されています。
乱高下の激しいビットコインの受け入れは、店舗にとってリスクでした。
しかし、コロナウィルス拡散での「売り上げ減少」が転機となり、ビットコイン循環経済の背中を押すことになります。
エルサルバドルがビットコイン法定通貨国になると、観光客数は30%以上増えました。
この波に乗って、各店舗もビットコインを受け入れることで売り上げの回復を狙ったのです。
具体的にビットコインが使われている場所は下記です。
- 食料品店
- レストラン
- 理髪店
- ネイルサロン
- 金物店
教育助成金として
- 学校生活にかかるバス代
- 学校で食べるお菓子代など
エルゾンテ村が「ビットコインビーチ」と称されるきっかけとなった寄付(10万BTC)が教育助成金としても活用され、「子どもたち」という未来に投資されています。
エルサルバドル全体で見ると、ビットコインを受けれている場所はまだ少なく、エルゾンテ村以外でビットコインを使える店舗は約1割ほどです。
しかし、エルゾンテ村を中心としてビットコインの使用が日常の一部になっていることは事実です。
これから年月をかけてビットコインが「新しい通貨」として成長していく大きな1歩と言えるでしょう。
ビットコインが法定通貨になったことで起こった変化
ここでは、ビットコインが法定通貨になったことで起こった「海外のエルサルバドルに対する変化」と「エルサルバドル国民の変化」に注目しています。
具体的には
- 「ビットコイン試験国家」に投資家や企業家が興味津々
- 地元で働く選択肢が持てるようになった国民
について解説します。
足を運ぶ投資家や企業家【ビットコイン試験国のエルサルバドルに興味】
2021年9月にビットコインが法定通貨となったことで、投資家や企業家たちは、エルサルバドルのビットコイン循環経済に興味を示しています。
世界初の試みであるビットコイン法定通貨化は、新しいビジネスチャンスに繋がる可能性があるからです。
今までの観光客の割合は、大半が近隣諸国の中南米から来た観光客でしたが、ビットコイン法定通貨後は、米国からの観光客が60%も増えました。
「実際にビットコインがどのように循環しているのか調査しよう!」と足を運んでいるのです。
これからも法定通貨としてビットコインが存続していくか否かはわかりません。
しかし、通貨としてのビットコインの価値はすでに世界で広がっています。
ビットコインを使える場所が増えてきている中、各国の企業も時代の波に乗るべくチャンスを逃すまいとしているのです。
【雇用を生み出すビットコイン】働く選択肢は「出稼ぎ」だけではなくなった
今までは出稼ぎに行かなければ仕事が得られなかった人たちも、ビットコイン経済圏によって働く場所が提供されました。
ビットコイン法定通貨化に興味を持った観光客が増えると、宿泊施設や小売店などの需要も増えるため、地元で働くチャンスも出てきます。
エルサルバドルの人々は「出稼ぎに行きたい」のではなく、家族を養うための手段として自国を離れます。
子どもを国に残し、両親のみが出稼ぎにいくケースが多いため「できることなら家族と一緒に暮らしながら、エルサルバドルで働きたい」と願っています。
これからのさらなるビットコインの発展で国が潤い、国民の生活と町の経済を好循環に導いてくれることに期待です。
広がるビットコイン経済圏【エルサルバドルの影響を受ける国々】
ビットコイン経済圏に夢を抱く多くは発展途上国です。
抱える問題は貧困から派生するものがほとんどで、国が豊かになれば解決できることがあります。
エルサルバドルのエルゾンテ村に続けとばかりに、近隣諸国もビットコイン経済圏に足を踏み入れているのです。
“ビットコインビーチに触発されて、
コスタリカではビットコイン・ジャングル、
グアテマラではビットコイン・レイク、
ブラジルではプライア・ビットコイン、
南アフリカのビットコイン・エカシ
など世界中で草の根運動としてビットコイン循環経済圏が再現されていく。”
コインポスト引用
発展途上国の希望になりうるビットコインを支えるのはあなた【資産運用にも繋がる】
ビットコインは私たちにとって投資もしくは投棄対象でも、銀行口座を持てない発展途上国の人々にとっては「生活する上で欠かせないもの」です。
ここでは、エルサルバドルのビットコイン法定通貨化について調べてみて、見えてきた結論
- ビットコインを持つことは「発展途上国を支えること」に繋がる
- 「資産を増やせる可能性」がある(損する可能性も)
について解説していきます。
1. ビットコインを持つことは「発展途上国を支えること」に繋がる
突然ですが、100円玉はどうして価値があるのでしょうか。
結論は、人がその”モノ”自体に価値を見出すからです。
歴史を遡れば、貝殻がお金の役割をしていた時代もありましたよね。
ビットコインの乱高下も理由は単純で、価値があると考えている人は保持し、価値がなくなると思った人は手放します。
関連する仕事をされている方を除いて、普段の生活の中で「発展途上国に貢献できること」は基本的にありません。
しかし、保持することがビットコインの価値を支えると考えると…
間接的にビットコインを必要とする「発展途上国の人々の暮らし」を支えられるわけです。
2. 「資産を増やせる可能性」がある(損する可能性も)
ビットコインの値上がりは、これからも続くのか、現在の価格を天井として下がっていくのかは誰にもわかりません。
実際に過去のビットコインの値動きをみてみると、誕生当初の通貨価格はゼロです。
しかし、今では10年以上の時をかけて、数百倍の価値がつくまでに成長しました。
執筆時の2022年9月時点でも1ビットコインは270〜310万円ほどの価値になっています。
期間 |
1ビットコインの価格 |
値動きの理由 |
2009~2010年 |
0円 |
通貨の価値なし |
2011~2012年 |
1,000円ほど |
世界で存在を知られ始める |
2013年 |
12万円ほど |
キプロスでの経済不安や日本での認知度アップ |
2014~2016年 |
3万円~6万円ほど |
GOX社のハッキング事件で下落&停滞 |
2017~2018年 |
11万円~200万円ほど |
ビットコインバブル |
「おっ!順調に値上がりしてる!!」と思うかもしれませんが、ビットコインには解決すべく問題が山ほどあるので、将来的にどう動くのかは未知です。
2022年7月2日のニューヨーク・タイムズでは「ビットコイン天国エルサルバドルは幻だ」と言われています。
国際通貨基金(IMF)も警鐘を鳴らし続けており、エルサルバドルの財政悪化が止まらなければ「ビットコインの法廷通貨化」が取り消しになる可能性もあります。
仮想通貨投資をする場合は、万が一に備え、消えてしまっても問題のない資金でやってみましょう。
私自身も週1回、ビットコイン500円分を積立していて、スタバでドリンク1杯飲んだつもりで続けています。
「ビットコインで救われる人がいる。利益が出たらラッキー」くらいの気持ちです。
まとめ:ビットコイン経済国として独自に発展するエルサルバドル
ビットコインが今後も法定通貨として存続していくには、ブケレ大統領の政治力が最重要になるでしょう。
もし失脚してしまえば法定通貨化の取り消しの可能性もあります。
しかし一方で、実はエルゾンテ村のビットコインビーチのプロジェクトは政府の動きとは全く連動していません。
プロジェクト単独で始まり、現在も走り続けています。
通貨として生き残るには、課題だらけのビットコイン ですが、エルサルバドルはビットコイン経済国として独自に発展しようとしているのです。
「ゲームチェンジャー」としてのビットコインがどう動くのかこれからも楽しみですね。
運用できる募金として、まずはビットコインをもらって、価格変動を見守ってみるのもおすすめです。